07 新たな取り組み
未来へ向けたCSR活動
循環型企業を目指して
バブル崩壊後は「失われた10年」と称されますが、九⻤産業㈱にとっては得ることの⽅が多い10年でした。「環境と開発に関する国際連合会議(通称:地球サミット)」(1992年)や「京都議定書」(1997年)から環境への意識が⾼まる中、九⻤産業㈱ではいち早く再資源化を目指した取り組みを始動、それが肥料製造です。1991年春、紀州林業場で肥料製造の研究を開始します。これはごま製品の製造過程で生じたごま粕等の排出物を廃棄するのではなく、肥料として再資源化する取り組みです。製造した肥料は自社農場での作物栽培に使用したり、農家様へ販売しています。まさに未来の環境を⾒据えたCSR活動です。肥料製造を始めて約20年が経過し、87期決算(2018年11⽉〜2019年10⽉)では年間売上が1憶円を超えるまでに成⻑しています。
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安全安心を追及
1996年(平成8)に創⽴110周年を迎え、九鬼産業の安全安心を追及する姿勢はより加速します。1997年(平成9)に、防⾍対策の⼆重ドアや窓の⾮設置を取り入れた⾷品ごま充填⼯場を、翌年にはHACCP対応の新たな⾷品ごま加⼯⼯場も建設します。
安全安心を追及する姿勢は原料のごまにも及びます。原料のごまは海外から輸入していますが、産地が多岐にわたり、かつ複数の農家が関わっていることから、各農家の農薬使⽤状況の確認が⾮常に困難です。定期的な農薬検査を公的機関に依頼していますが、検査体制の強化のため、1990年頃に原料ごまの残留農薬を測定する専⽤機器(ECD/FTD-GC)※1 を導⼊します。輸⼊ごまへの農薬チェックが随時実施でき、検査体制は格段に進歩しました。その後も2003年にGCMS※2を導入、2006年にはECD/FTD-GCを最新のECD-GCに更新、翌年は既存のHPLC※3に蛍光検出器を導⼊し検査項⽬を拡充しました。当初は10項⽬程度でしたが、現在では最大480項⽬の農薬検査が可能になっています。
※1 ガスクロマトグラフィー(GC)と呼ばれる分析手法。
電子捕獲型検出器(ECD)で有機塩素系農薬を、熱イオン放出検出器(FTD)で有機リン系農薬を高感度で測定できる。
※2 GC に質量分析器(MS)を組み合わせた分析手法。より高いレベルでの分析が可能になる。
※3 高速液体クロマトグラフィー(HPLC)と呼ばれる分析手法。
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国際認証の取得
順調に事業規模の拡⼤する一方で、品質管理体制をどのようにマネジメントすべきかという壁に直面します。この問題を解決するために着目したのが品質マネジメントの国際規格「ISO9001」です。1998年、各部⾨の代表者でプロジェクトチームを組み、ISO9001取得を⽬指す取り組みが始動。⽉2回の会議を中⼼に試⾏錯誤を重ね、 1999年10⽉、認証取得にこぎつけました。企業としてより⾼い技術と品質を維持し、さらに向上させていくシステムが構築されたのです。特に、登録範囲は各種ごま製品の開発・製造・付帯サービスとし、部署としては品質保証部・全⼯場・営業部・開発部など品質に関わる全ての部⾨を対象としています。全部署⼀⻫取得は業界において⾮常に稀なケースでした。
さらに、2000年以降では集団⾷中毒事件やBSE問題、⾷品偽装や消費期限偽装など⾷品業界のモラル低下が社会問題に発展します。九鬼産業では「安全・安⼼・⾼品質」をより確実にするため、2008年2⽉に⾷品安全マネジメントシステムの国際規格「ISO22000」を取得。原材料受け⼊れから商品の納品に⾄るまで、各⼯程の安全⾯を徹底するシステムの運⽤を開始します。ごま加⼯業界においては同認証を取得したのは九⻤産業が初めてです。2012年、さらなる安定供給を⽬指しISO22000にPAS220(⼀般衛⽣管理を強化したガイドライン)を組み込んだFSSC22000を取得。2017年には日本発の食品安全管理規格であるJFS-C認証も取得しています。
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Column
環境への思いやり
2012年(平成24)、ボトリングプラント屋上の空きスペースを有効活用するため、太陽光パネルが設置された。76.9kWの電力を生み出す本システムは同年に再生可能エネルギー発電設備の認証を受け、太陽光発電所として登録されており、九鬼産業がエネルギーを“消費する”だけでなく、“つくる”企業を目指すシンボルとなっている。2013年にはイノベーションセンター屋上に太陽光パネルを、紀州林業場に水力発電機を設置している。その後も、電気自動車やLED照明の導入など、未来の地球環境を見据えた行動に取り組んでいる。
太陽光発電設置
電気自動車導入